クリーンアップキャンペーン結果
2010年結果概要
2010年のクリーンアップには、北は北海道から南は沖縄県まで延べ41,642人が参加し、105トンのごみが回収されました。このうち秋に行われた「国際海岸クリーンアップ(International Coastal Cleanup; ICC)」には10,441人が参加し、71 kmの海岸および水中から一つひとつ丁寧に拾い上げられたごみの総数は322,162個にも達しました。ご参加頂いた皆様,本当にありがとうございました。ここでは図を使って2010年のクリーンアップの結果の概要を報告します。詳しくは,「クリーンアップキャンペーンレポート2010」をご覧下さい。
- クリーンアップキャンペーンレポート2010の購入は,販売物の頁をご覧下さい。
クリーンアップ会場
図1 2010年クリーンアップキャンペーン全会場の分布
参加者数,会場数,回収したごみの量のTOP5都道府県
図2 参加者数,会場数,回収したごみの量のTOP5都道府県
総合ワースト10品目
ここに注目!
- 総合ワースト10は、全体の73.3%(昨年74.7%)、ワースト20は、全体の92.9%(昨年92.6%)。
- 破片・かけら類を除いた製品類の総合ワースト10(タバコの吸殻・フィルター、食品の包装・容器、プラスチック袋(農業用以外)、飲料用プラボトル、ふた・キャップ、生活雑貨、花火、飲料缶、ロープ・ひも、レジンペレット)は、製品類全体の87.8%。しかしこれは全体の43.5%にしかならない。
よってワースト10品目の製品ごみの発生を完全に防止することができても、それだけでは海洋ごみ問題を十分に解決することはできない。
図3 総合ワースト10の構成割合
総合ワースト10品目の20年間の推移
ここに注目!
- タバコの吸殻・フィルターは、1990年代を代表するワースト1品目でしたが、2001年以降は硬質プラスチックが主なワースト1。
- 20年間でプラスチックシートや袋の破片、飲料用プラボトルの順位が上昇。
- 最近,食品包装・容器、プラスチック袋類(農業用以外)が再び順位上昇。
図4 総合ワースト10品目の1991年から2010年までの20年間の推移
流出起源(破片類,陸上起源,海域起源)の特徴
ここに注目!
- 破片類が約1/2を占める。
- 陸上起源ごみは、「飲料」、「食品」、「タバコ」、「生活・レクリエーション」など我々の日常生活に起因するものが9割以上。
- 破片・かけら類の割合は、海岸では5割を超えたが、河川や水中では3割に留まり、内陸ではほとんど見られない。プラスチックの破片化は海岸では深刻。
- 「タバコ」は太平洋・瀬戸内海で、「飲料・食品」は日本海・東シナ海で割合が高い。
図5 流出起源別総合結果の構成割合
海域別の特徴
ここに注目!
- 太平洋:レジンペレットがワースト10内。
- 瀬戸内海:花火が4位と高く、カキ養殖用パイプが7位。
- 東シナ海:タバコの吸殻・フィルターが7位と他の3海域に比べ低い。
まとめ
水辺の漂着散乱ごみの特徴をまとめると以下のようになります。
- 数量もさることながら種類も多いこと
- 破片類が半数を占めること
- 上位品目はここ数年大きな変化はないこと
- 破片を除くと陸上起源類が11/12を占めること
- 日常生活で我々が使っているプラスチック製品、特に「飲料・食品」「タバコ」「生活・レクリエーション」が陸上起源の8割を占めること
- 海域による特徴があること
- 製品類のワースト10は全体の4割であり、これらの発生抑制だけでは海ごみ問題を解決することはできないこと
これら海洋に流出したごみは、一度海底に沈むと回収が困難となります。また海に流出したごみは,海の流れによって広域に拡散していきます。産業や医療に関わるごみの流出も大きな問題ですが、最も割合が高いのは、「飲料・食品」、「喫煙」、「生活・レクリエーション」など我々の日常生活に起因するごみです。よってまずは海と離れた陸上で生活する我々人類全員の生活が、海洋に大きな負担をかけているという意識を持つことが必要です。
また近年、海岸に放置されたごみの破片化の進行は深刻です。特にプラスチックは、微小な破片となっても自然界では長期間分解されません。本結果から見えてくる効果的な対策は、全体の7割を占めるワースト10への集中的な対策となりますが、それには全体の半分を占める破片・かけら類の発生抑制が必要となります。これら破片・かけら類の多くは、海岸に漂着したものが紫外線による劣化や波浪による衝撃などによって破片化したものと考えられることから、破片化する前に海洋から回収し、海岸をきれいな状態で保っておくことが必要です。よって海洋ごみ問題の解決のためには、発生抑制策の推進はもちろんですが,これまでに流出したごみによる問題の深刻化を防ぐためにも、回収を積極的、継続的、効率的に取り組む必要があります。